#3全国で「ありがとう」が飛び交う無農薬農園「きづきファーム」
東京ドームよりも広い?
しかも無農薬!?
この農園で障がい者を元気にできるやん!
沖縄に「きづきファーム」という僕の名前が使われている農園があるんですよ。しかも東京ドームよりも大きい約6ヘクタール。広すぎやろって感じなんですけど(笑)。
実はこの「きづきファーム」、ただの農園じゃないんです。
今回は「きづきファーム」がなぜ「きづきファーム」になったのか、どんな出会いから始まり、具体的にどんなことに取り組んでいるのかなどをお話しします。
一本の電話から始まった沖縄での福祉事業所サポート。そこでの出会いが「きづきファーム」のきっかけとなる。
2020年7月半ば、僕が開発に携わっている「障がい者福祉サービスシステム」のホームページを見たある女性から一本の電話がありました。
「沖縄でこれから障がい福祉の事業所を立ち上げたいと考えています。もし良かったら、開業に関わること教えてください。」
そう言われた僕は「それなら、来週沖縄でお話聞きましょか?」と提案をしていました。そんなことを僕が言うもんですから、相手の方はビックリしていましたね。
そして、訪問したのは忘れもしない7月31日。夏真っ盛りの沖縄らしくカラッと晴れた日でした。
待ち合わせ場所に行くと電話で話した女性が迎えに来てくれていました。その方の車の後ろをついていくと、森の中へ入っていくではありませんか。ギリギリの車幅で車は今にも崖から落ちそう。そんな森の中の細道を抜けると、なんと両手いっぱい広げても到底足りないくらいの広大な景色が見えてきました。こんなにも広い農園を見た衝撃を今でも覚えています。
車から降りると、テクテクとおもむろに男性が近づいてくるではありませんか。話を聞くと、この方は比嘉社長と言い、ここの農園とこれから立ち上げる福祉事業所のオーナーでした。
この広い農園を持っているだけでも驚きなんですけど、全ての作物を無農薬で育てていて、有機JASマーク(農林水産省に農薬や化学肥料などの化学物質に頼らない農産物であることが認められている証)にも登録されているとのことでさらに驚きでした。
比嘉社長は、20年ほど前から「循環農業」という自然を壊さず、自然をそのまま活かしながら農作物を育てるという取り組みをしているとのこと。この取り組みが自然や身体に良いことはわかっているけど、ものすごい大変なことも簡単に想像できます。それを広大な農園全部でやってるんですから本当にすごいと思いました。
それだけじゃありません。
「せっかく育てた農作物をただ販売するだけではもったいない。ここで育てられた農産物を障がいのある人たちの食材にしたら元気になるのではないか」という考えで就労継続支援B型の事業も始めたいというビジョンや、「この農園で育てられた農産物を食材にしたり、加工したりして作られたものは、障がいのある人たちの健康にも良いに違いない」と語っていただき、その話は僕のハートに刺さりました。
大阪では考えられない福祉の形、いや日本でも唯一無二の福祉の形になると確信し、「ぜひこのビジョンのお手伝いをしたい」と心から思いました。
それから定期的に沖縄に行き福祉事業所の立ち上げ、運営に関わる勉強会などをおこない、引き続き比嘉社長との関わりを重ねていったんですが、比嘉社長いわく、最初は僕のことを怪しいと思っていたらしいです。「もし悪い人だったら山に逃げ込めばいいや」って後日聞いたことも、今では笑い話です(笑)。
比嘉社長はこれまで数多くの事業を経験されている方で、人を見る目には自信があったみたいで。僕が沖縄でサポートをしている姿を見ている中で、信用してくれたみたいです。
農園オーナーの娘さん夫婦の福祉修行開始。大阪だけでなく沖縄の障がい者も元気にしたい。
ちょっと話は変わるんですけど、一度比嘉社長が大阪に来て僕の事業所を見学してくれたことがあるんです。そのときに比嘉社長の娘さん夫婦も来られ、話を聞くと娘さん夫婦が住んでいるところが八尾市で、僕の住む東大阪市の隣ではありませんか。いろいろ話していると、娘さん夫婦もいずれは沖縄に帰って福祉事業をやるとのことだったので、うちの事業所で修行をしてもらうことにしました。
もう2ヶ月間みっちり修行してもらいましたよ。グループホームで勤務してもらったんですけど、敢えて3日連続で夜勤に入ってもらって厳しさを体験してもらったこともあります。
あと、毎日レポートも書いてもらいました。福祉の仕事では利用者さんの保護者の方と連絡帳のやり取りをすることもあるので文章能力も求められます。なので、レポートを通じて「この考え方よりもこっちの方が良い」や「ここの言い回しは直した方が良い」などのやり取りをして文章能力を磨いてもらいました。
娘さん夫婦は2ヶ月間の修行を終えて、その後沖縄に戻って無事にグループホームを開所されました。2ヶ月間毎日一緒にいたから、うちで働くスタッフとも仲良くなって。今でも何か悩みがあったときは2ヶ月の修行で同じ釜の飯を食べた大阪の元同僚たちに相談できる関係が続いています。
ちなみに、この娘さん夫婦も僕に対しての第一印象は「怪しい人」だったそうです(笑)。
障がい者の笑顔を作れる「きづきファーム」の誕生!ものすごいこだわりが反映された無農薬農園だった。
沖縄でのサポートを続けていく中で、常に比嘉社長と僕は「一緒に何かできないかな」と話し合ってきました。
比嘉社長は農園を「きづきファーム」という名前にすることで「築さんの事業所の利用者さんやスタッフも気軽に農園に来てこの素晴らしい自然に触れ、美味しい野菜を食べることで元気になってくれるんじゃないか」と提案してくれました。
それに加え、比嘉社長は僕が運営する事業所の利用者さんや従業員さんが心身ともに健康になることと、利用者さんの工賃アップにも目を向けてくれました。「きづきファーム」で育てた農産物を沖縄で加工して大阪に送り、その食材を使って何かをすることで事業所の売上に繋がるのではないか。
このとき初めて比嘉社長が僕を信頼してくれたんだと気付いた瞬間でした。
きづきファームには看板があるんですけど、とても温かみのある看板です。
自社のペットフードときづきファームのコラボ。全国の利用者さんが「ありがとう」と言われる機会を増やす。
僕たちは今、北海道のエゾシカを原料としたペットフード事業にも取り組んでいるんですけど、「きづきファーム」で育てた食材とコラボさせていきたいなって考えています。例えば、パパイヤを混ぜたペットフードを開発するとかね。
「きづきファーム」で育てた農産物をペットフードに入れることで、商品づくりのすべてにおいて障がいのある利用者さんに関わってもらうことができるんです。沖縄の利用者さんがきづきファームで食材を育てて加工し、それを使って大阪でペットフードを製造して、利用者さんに袋詰めをしてもらうみたいな形で。
今はパパイヤをメインに新商品を考えていますが、他の農産物を使えば分野も広がりますよね。
この商品を作る過程で発生するさまざまな作業を利用者さんに担当してもらうことで、多くの人が笑顔になるんじゃないかと考えています。
こうすることで沖縄だけでなく大阪にも販路が広がるので、両方の利用者さんがお客様から「ありがとう」と言ってもらえる機会を増やすことができます。そして、どちらの利用者さんもやりがいをもって働けて、元気でいられる環境を作りたいと夢を広げています。
大人になっていくにつれて、ビジネスでしか人と出会えなくなってきます。この出会いは「何か僕にできることはないのか、すべての出会いに意味があるのではないか」そう思い続けたことで大きく二人の運命を繋ぐルーツになったと思います。
まだ始まったばかり。今後「きづきファーム」がどうなっていくのか。今日も僕と比嘉社長の心は沖縄らしくカラッと晴れている。